目を覚ますと昼過ぎだった。
時間を確かめるために開いた携帯には、複数の人からメールや着信があったようで。 そういえばこれは無断欠席になるのかな?などとのんびり考えてみる。 二日酔いのせいで頭が痛くて、体がだるい。
今はまだ大学への連絡も、メールの返信もするような気がおきなくて、机に携帯を置く。 机の端に食べかけの(といっても完全にとけきっているのだが)抹茶アイスのカップがあった。
それの隣には、彼が昨日、お気に入りだといっていたスプーンがあった。


<薬用ライフ・3>


「・・・・っ」
今日は起き上がってから一度も声を出していない。 声が出ないといったほうがいいかもしれない。 彼のことを、彼の名前を思い出して(思い出す?だって本当に記憶に無いんだ) 彼の名前を呼ばないと一生声が出なくなるような気がした。
(記憶に無いはずの彼が何故か頭から離れない)


抹茶アイスが好きだという彼

少し猫目の彼

「忘れてもかまわない」と僕に言った彼


強い彼
弱い彼

弱い僕


・・・・僕は彼の何を知っていたのだろう

***

無口なままの自分の携帯をじっとみて、ため息を一つもらすと同時にとじる。 高校のころから皆勤賞を貰うくらい元気な吹雪が無断欠席をした。
藤原のことだろうか?
いや・・・・でも、まだ何もきっかけらしいことは起きていないはず。

ならば風邪・・・・か?

「なぁ丸藤、お前のトコにも連絡きてないのか?」
大学の研究チームで吹雪とペアの生徒が声をかけてきた。
「ああ、まだ何もないんだ」
「おっかしいよな~。おかげで教授カンカンだぜ?こってり絞られるぞ、吹雪」
「こっちに火種しなければいいがな」
「確かに!あの教授よく他の生徒巻き込んで説教するからな」
面倒ごとは教授の説教だけじゃないだろうが・・・・・そう、思ったのが気づかれたのか 考えていたことを当てられた。

「やっぱ藤原のこと・・・かな・・・・・・」
彼らには吹雪と藤原は友人としか伝えていないが、どちらにしろ、いきつく考えは一緒だ。



なにせ、あの二人にあんなことがおこったのだから。



(あとがき)
ちょっと生徒にもでてもらいました。 ちなみに吹雪と藤原がつきあってることを知っているのは亮と明日香ぐらいです。 他の人には友人として話してあります