「よろしくな、ヨハン」
「ああ、よろしく」


なんでのんきに会話してるんだろう・・・



<存在理由・2>



いつも1週間前にターゲットの確認をすることにしている。 資料と写真だけでは少し信用しきれないところがあるからだ。

もし違う人間の命を奪ってしまったら・・・?そう考えるとゾっとする。

「ここ・・・かな?」

資料から分かったこと。
ターゲットは化石の発掘やら保存なんかをしているらしい。 いつも山奥で作業をしているそうだ。
さっそくそれらしき人物を見つけて、地面に降り・・・ようとしたところで改めて周りを見渡す。 ・・・石がごろごろしてる。これじゃあ、何処にも座れそうにもないなぁ。

それならば、と大きな岩の上に腰を下ろす。 おぉ、なかなかの絶景・・・じゃなくって、ターゲットを確認しないと。
そう思ったとき、こちらにしっかり視線を向ける男がいた。
俺・・じゃないよな?
きょろきょろと周りを見渡すが、凝視するような物はないように思える。 だが、人間興味を持つものは各々。

もしかしたら・・・
「空でも見てるのか?」
「いや、君を見ていたんだが」
長年一人で動くことが多く、自然に増えた独り言。
それに生きた人間から返事が返ってくるとは思わなくて、思わず岩の上から落ちそうになる。

「うわっ」
「おっと・・・っ!」
すり抜けることなくしっかりと支えられた体。
いつもは気体のように重さをなくしている。 体を支えられるとなったら、重さがないと変に思われる。 即座に体を気体から固体に切り替えた。 固体に切り替えたからと言っても、普通の人間に見えるはずがないのだが・・。
見えるとすれば第六感が異常に働いている人間だろうか?

「あっぶねー・・・サンキュー」
「いや、たいしたことないよ。ところで・・・」
「ん?ああ、ちょっと探検してたら道に迷っちゃってさ。
 少し休憩しようと思って座ってたんだ」
「へぇ・・・死神みたいな格好で?」

しまった!
この格好じゃあへんな奴確定だ・・・。
重さには気がついたのに、格好には気がまわらなかった。
まぁ、姿が見えた時点で外見を誤魔化すことは不可能だけど。

でもなるべく死神だということは隠したい。

「俺、日の光に弱くって・・・実は家から抜け出してきたんだ」
「大丈夫なのか?」
無理やりの言い訳に驚く男。
あ。そういえば、名前まだ知らないや。

・・・たぶん知ってる名前だろうけど。

死神の体に触れられることが出来る生きた人間。

「大丈夫だって。まだ名前言ってなかったよな。俺はヨハン」

それは・・・

「俺はジム。よろしくな、ヨハン」

「ああ、よろしく」


死期が近い人間。



・・・・・・ターゲット確認。


(本当はよろしくよりもごめんなさいを言いたかった)



(あとがき)
本当の化石発掘関係者に怒られそうな文章だ(汗) ジムとヨハンの会話がかけて幸せ(ちょっと互いに探り合ってるけどね←←)